2012年7月13日金曜日

森の道にお客さん

今日は、背広姿のみなさんが、
「森の道」開設現場に。
北海道の林政トップの林務局長さんや、
森林計画課、振興局の課長さんなど。

















もりねっとは、「森の道」と呼んでいますが、
林業界では「森林作業道」と呼ばれています。
昨年から本格的に国の補助事業として
進められています。

ポイントは、恒久的に林業などの作業に使える、
砂利を敷かない、土を積んで作った道、
ということです。

ふつう、みなさんがイメージする森の中の道、
というと、「林道」が思い浮かぶと思います。
これは、砂利が敷いてあり、大型トラックも
走行する道です。

「森林作業道」(=森の道)は、
基本的に土を積んでつくります。
砂利も使いません。
簡易だけど、雨で壊れず、
何十年も使える、という道です。

日本の「作業道」の草分け、田邊由喜男さんに
何度か指導していただいて、なんとか
僕らなりに分かる範囲で、作り方のポイントを
お伝えしました。

現場を局長さんに見ていただいたことは、
来年以降の道づくりに、なんらかの推進力に
なるのでは、と思います。
今後も、働きかけをしていきたいと思います。

北海道では、これまで国有林が作業道開設に
力を入れてきていますが、民有林ではまだまだのようで、
考え方が伝わっていない、と感じました。
北海道にもモデルが普及するように、
政策を考えてください、とお願いしました。

大型トラックで入れる林道、
その先に毛細血管のように森をめぐる道、
それらが、うまくバランスがとれれば、
いつでも森に入れ、森を壊さず手入れができる、
そんな風になればいい。

ではどのくらいのバランスか?
どんな作業・機械システムか?
手入れの仕方や、将来の森の姿は?
木材の販売先や用途は?
そこが、これからの議論だと思います。

それから、昨日は、別のお客さんが
雨の降る現場に訪れました。

















シラカバの皮をとりに、工芸家の方が。
以前から、樹皮がほしいとお聞きしていたので、
倒してすぐに連絡。道をつくるのに、
どうしても切らなくてはならない木でした。
この樹皮から、素敵なクラフトが生まれるそうです。

山主さんに、森の道ができた記念のプレゼントも
いいかも??
森を手入れして、お金の精算で終わり、でなく、
夢をつなげることもあったらいい。
ほんとうは、森を持っているって素敵なこと。
そんな風に思ってもらえたら。

いま、計画の1000mの半分まで開設しました。
またご報告します。





2012年7月4日水曜日

道づくりの準備

昨年、道づくり研修会で、
日本の「森の道」草分け
田邊由喜男さんに開設していただいた道と、
その延長をもりねっとでつけた部分の
雪がとけたので、状況を見て来ました。

今年の道づくり事業の詳細について、
振興局の方に現場を見ていただいて
査定や測量などの
アドバイスをもらうのもかねて。

















現在、国が進めている林業の機械化の
ために、トラックの通れる「林業専用道」、
林内にはいって木材を搬出する「森林作業道」
を面的に広げていこうとしています。

まだ北海道にはほとんど
「森林作業道」のモデルがありません。
どうやら、もりねっとが先例をつくろうと
しているようです。

国で森林作業道の補助金を出しているのですが、
北海道の単価は本州にくらべ非常に低い。

なぜ???

北海道は、ブルドーザーで押しただけの道が
普及しているから。
田邊さんのような長く使えるていねいな道作りとは、
根本的に違うのです。
しかし、今年の作業は、このブルドーザーの単価で
やらなければなりません。

行政の担当の方も、
いろいろ調べてくれ、
なんとか大赤字にならず着手できそうな
ところまでこぎつけました。

開設中の現場も見ていただいて、
今後、道づくりの単価をどうしたらいいのか
説明根拠を作っていきましょう、
ということに。

試行錯誤が続きます。
また報告します。

森の相談と、プランづくり

陣内です。
今回は、「森の相談と、プランづくり」です。

雪がとけ残る旭川市東鷹栖。
この夏、2000mの道づくりと、間伐を予定している現場です。
昨年も夏と冬に現場を見ていますが・・・
残雪のときにしか分からないこと、
それは地形と水の状態です。
夏は胸まであるササに覆われ、よく分かりません。
今は、水のあるところだけ先に雪がとけて、
非常によく分かるようになります。
でも、この状態は1年のうち2~3週間というピンポイント。貴重です。
水のあるところには基本的に道をつけません。





































この30ヘクタールの森は、5人の方が所有しています。
森の地面は微妙な傾斜の違いから、
水気が多かったり乾いていたりしています。
数10メートルずれただけで生えている木の種類が変わっています。
たいていはカラマツやトドマツが植えられているのですが、
水気の多いところ(谷地、ヤチといいます)はカラマツの成長が悪く、
ヤチダモやハルニレ、オニグルミなどの林になっています。
こういうところでの、過度な伐採は森が再生しにくいので、
積極的な林業はできません。

反対に、乾いたなだらかな尾根ではカラマツも大きく立派に育っています。
広葉樹では、ミズナラやハリギリ、イタヤカエデも元気です。
生産性が高く、間伐後の再生も旺盛と思われます。

考えてみると、開拓時代にたまたま割り当てられた土地で、
水気が多かったら、林業の収益は期待できない。
しかも、その人の森は、水辺の大切な環境を守り、下流のみんなの
ためになっているのです。
ヤチダモが大きく育つには、カラマツの倍の時間がかかります。
その分、高く売れますが、100年以上待ってください、
というのが現実的な提案なのか迷います。

















もし100年待てば、立派に育った木を少しずつ切って、
森の再生力をこえないように林業をすることは可能かもしれません。
本来林業は、「元本」をとっておいて、「利子」の一部を
分けていただくものだと思うのです。

昔住んだ山をもう一度見たいという山主さんもいました。
いい道をつけて、車で連れて行ってあげたい。
その上で、森の将来のプランを説明したいと思っています。
プランづくりは、林業試験場、北大などにアドバイスを
もらいながらやる予定です。
またご報告します。

道づくりの準備

「道づくりの準備」について書きます。
昨年は東旭川の山主さんの森、
1.6haに400mの道づくりをしました。
(写真は、道とカラマツ材の搬出のようす)


今年は、東鷹栖の30ha(9万坪)に、
約2000mの道づくりを準備しています。
30haは5人の山主さんが所有しています。

山の地形にあわせて、
無理のない、使いやすい道をつけたい。
大雨でも壊れず、歩いても楽しい道にしたい。
だから、山主さんみんなに声をかけて、
手入れの了承をもらってから道の線形を考えます。

昨年から森林組合の人と山主さんに説明したり、
山を歩いたりして準備をしています。
あとは、道づくり名人、田邊さんの技術を
どう現場に展開していくか。
そして、込み合った林をどう手入れして、
赤字にならないようにうまく搬出するか。
そして、手入れしたあとの林が
元気に育っていくようにできるか。

カギは、重機のオペレーターです。
昨年は、8名のオペレーターの方々が
名人、田邊さんの研修を受けました。
でも田邊さんのレベルになるには、
素質と、何年もの修行が必要だとわかりました。
今年も、昨年のような研修を考えていたのですが、
田邊さんからは、数日の研修ではダメ、と言われました。
ほんとうの技術の普及につなげるには、
マンツーマン指導、だそうです。

(3月、滋賀県の現場にて)

















実は、田邊さん、本州各地に路網のモデルを作っています。
滋賀、京都、山梨、長野、岩手、岐阜・・・
大きな現場で、道づくりから、木の搬出までやって、
そのあとの間伐をどうやったらきれいに効率よくできるか、
一目瞭然、という状態まで仕上げていくそうです。
まさに山のモデル。
田邊さんは、山全体のモデルを見せたいのです。
しかし、それをお願いするには予算が足りない。

昨年の道づくり研修に、国有林の方も来られていました。
最近お会いすることがあり、
実は、国有林でも田邊さんの研修を考えている、とのこと。
乗りかかった船、
もりねっとは国有林のお手伝いをすることにしました。
田邊さんのモデルが北海道にできることが、
まずは大事と考えたからです。

(国有林の現場調査に同行)






















田邊さんの考え方を、分かる限りお伝えしました。
国有林の方といっしょに、現場も見に行きました。
まだ調整しなければならないことがたくさんあります。
有意義な研修になることを願っています。

いま、昨年田邊さんの研修を受けたAさんが、
田邊さんのもとで修行中です。
短い期間ではありますが、マンツーマン指導です。
厳しく指導され、多くの経験をさせてもらっているようです。
今年、Aさんともりねっとが、いっしょに道づくりをやる予定です。
どこまでできるか、未知数ですが、がんばります。
山主さんへの説明や、現場調査、機械の準備、
やることはたくさんあります。
期待と不安がまじります。
また報告します。

2012年7月3日火曜日

森と里つなぎプロジェクト

2011年の5月から、秋山財団の助成をいただき、
「森と里つなぎプロジェクト」に取り組んできました。
昨年から1年間取り組んできたまとめを、
数回にわけてご報告します。
今回は、「プロジェクトへの思い」です。(ちょっと長いです)

●どうして、「森と里つなぎ」なの?
このプロジェクトでは、「森の道」づくりの技術開発や人材育成、
小型の機材などを使った、アマチュア林業の支援(自伐支援)、
薪などのほか、木工で使用する小ロット・多樹種の木材供給(資源循環)、
山主や都市住民のさまざまな思いをプランにする「森の相談」を
つなぎ合わせながら進める計画です。

いま、日本の林業をたてなおすために、
細切れに所有されている森をまとめて集約化し、
そこに大型機械を入れて間伐をして、コストを下げ、
木材をたくさん出して、自給率もあげよう、
という目標がたてられました。
林野庁の「森林林業再生プラン」です。

でも、もりねっとはそこに抜けているものがあると感じています。
効率化した機械でどんどん手入れは進む。
でも、山主さんたちは、契約のハンコを押すだけにならないか?
数年前から、農村の聞き取り調査をしてきましたが、
「自分で手入れしたい」
「何かしたいけど、どうしたらいいか分からない」
「手入れして薪に使いたい」
「自然豊かな森に再生したい」
こんな声をたくさん聞きました。
こんな声に、林業界はちゃんとこたえてきたのだろうか?
きめ細かいアドバイスをしてきたのだろうか?
「素人には無理」と決めつけていなかっただろうか?

実は、こういうことに応えていくと、
様々な森と人との関係ができて、
農村、山村のくらしがゆたかになったり、


コミュニティビジネスに発展したりするかも知れません。

森は、そんな可能性を秘めているのです。



●「森の道」づくり
そして、山主さんが森に行きたい、
どうなっているのか見たい、何かしたい、
そういうとき、「森の道」があるといい。
立ち木をよけながら、ゆったりと山をめぐる、
森にも人にもやさしい道です。

これには、実は高度な技を駆使しているのです。
削りっぱなし、大雨で崩れる道とは違います。
道づくりの名人、田邊由喜男さんの指導を受けながら、
北海道にあった道づくりを目指しています。

(2011年6月の研修会のようす)

















●「自伐支援」と、「資源循環」
森に入れるようになると、
いままで眠っていた山主さんの思いが、
むくむくとわいてきます。
(これまで何度かそういうことがありました)

「薪を出そう」
「丸太を切り出して、小屋づくりに使えないかな?」
「ほだ木をとろう」
「山菜をとろう」
「焼肉しよう」

焼肉はすぐに実行できるのですが、
重たくてかさばる木材を運び出すのは大変です。
でも、農家にはトラクターがある。
実は、ヨーロッパなどでは、農家のお父さんが、
トラクターを駆使して林業をやっています。
そこで、ヨーロッパの機械をテストしよう、
いろんな角度から、「自分でやる林業」をテストしてみよう、
そして、安全に、効率よく、楽しく作業できる条件は何か、
農家の人たちに提案したい。
そう思いました。

(写真はトラクターにつけた、丸太の積み込み用アタッチメント、
オーストリアから輸入したもののテストを行っています)




さらに、自分で使う薪を出すのもいいけど、

地元のみんなで集めてきた原木を、
みんなで薪にすることができたら、
農閑期の仕事にならないか?
そんなことも可能になればいいと思い、
まずは自分たちで実験して、
データをとることにしました。
ここでもきっと、森の道、トラクター、
農家のトラックが活躍すると思っています。

実は、ヨーロッパ各地では今でも薪が健在で、
薪づくりが農家の副収入になったり、
燃料用のチップも農村のビジネスになっていたりします。
森を育てながら、田舎が美しく、豊かになれば、
ほんとうに素敵だと思います。

●プロジェクトのネットワーク
もちろん、もりねっとだけでは、
このプロジェクト実行は不可能です。
森の道技術では田邊由喜男さん、
森の手入れ技術では道立林業試験場や北大、
山主さんとの話し合いでは旭川市森林組合や、
地元農家の世話役の方々、
フィールドを提供してくださる山主さんたち、
木工家との広葉樹材利用では、旭川市工芸センター、
木質バイオマス利用では、森のエネルギー研究所、
その他たくさんの方々といっしょに、
プロジェクトを進めていきます。

ひとつひとつの断片が、モデルになるためには時間がかかります。
しばらくは全体像が見えにくいかもしれません。
プロジェクトの形が少しずつ変わっていくかもしれません。
でも、地域にとって最適は何か?を、探っていきます。