2012年12月28日金曜日

見学会、その後・・


10月に、森の道見学会を開催したときに、
地元、東鷹栖に住んでいる農家の方が、
うちの山も見に来てもいいぞ、と言ってくれたので、
11月17日にまず一人目の方の山に行きました。

4.4ヘクタール(約14000坪)のカラマツ林。
植えてから40年くらい、10年くらい前に間伐をしたようです。
でも、既にだいぶ木が成長し、混み合って来ていて、
もう間伐が必要な感じです。

「全く山に来てなかったし、あまり手入れも考えてなかった」
ということでしたが、久しぶりに来て見ると、
やっぱり手入れしたくなったみたいです。



こちらは植えたカラマツと同じくらい天然のシラカバが生えて、
非常に混み合って、木がひょろひょろです。
近いうちに間伐しておいたほうが、
将来、立派な森になっていきそうです。

山を見ながら、何かを考えてたたずむGさん。
(爺さんじゃないです・・)




Gさんは、この山を地元の知り合いから
10数年前に買ったとのこと。しかし、山へのアクセスが、
田んぼのあぜ道(上写真)しかなく、大型トラックは
入れません。間伐材の運び出しと集積場所の確保が
難しい状況です。

「おれは自分では山仕事はできん。誰か、地元の
人に頼めるといいんだが・・」
「そうですね。まずは道つけと間伐事業ができるか、
森林組合と相談しましょう。僕らもお手伝いができるかも
しれません。」
まずは条件整理、下調べ。実際に間伐ができるまでには、
いろいろ調整が必要です。でも、道の見学会が
きっかけになったのは嬉しいことです。

実際にこんな「森の相談」につながったのは数件ですが、
地元に住んでいる山主さんの絶対数が少ないので
しかたないことです。

あとは、個々の山主さんたちの体験談を、
地元のみなさんに共有してもらえるように、
ニュースづくり、地元に配布、また見学会、の繰り返しです。
山の手入れや薪づくり、森での遊びが、
くらしの中になじんで、楽しそうだったら、
「山を持つってのもいいもんだな」と思ってもらえると思うのです。

今は、「山は金にならん」 以上、終わり。
地元の農家山主さんのリアルな心情だと思います。
確かにそうなのですが、実際に山とつきあってみると、
「少しは小遣いになる」「ちょっと楽しい」
という気持ちの変化が起きる気がします。
もちろん、全ての山主さんがそうなるわけではないのですが、
山主さん目線の「森の相談」、
そして夢を実現するツール、「森のプラン」と「森の道」によって、
山主さんの気持ちに火をつけることができそうです。



山を見せていただいたあと、お宅におじゃましました。
農家はリタイヤして、食べる分だけを作っています。
が、こだわっていることは、
「自分で作れる食べ物は、なるべく自分でつくる」この話で、1時間以上。
このこだわりは、どこかで山づくりにつながるかも?知れません。

奥さんは、自家製の豆腐づくり。
もちろん大豆も自家製。味噌も自家製。
豆腐は買ったことないそうです。
となりに住んでいる娘さん夫婦のところにも届けています。
うらやましい・・・ 
僕はおからをいただいてきました。とってもおいしかった・・・

大豆は遺伝子組み換えの表示が甘い、という話から、
政治の話まで。。。



今は、Gさんのくらしから山は遠いところにあって、
「持っているけど、ほったらかし、行ったことない」
状態でしたが、娘さん・婿さんが山菜とりが好きと
いうこともわかり、「歩ける森、楽しい森、立派な森」を
目指そうという方向性も見えてきました。

アクセスをどうするか、という課題はありますが、
検討の余地はあります。

次回は、もう一人の山主さんの
「森の相談」の様子をお伝えします。


2012年12月7日金曜日

山主さんご案内

道の見学会が終わって、山主さんたちを
森にご案内しました。
ずっとおばあちゃん(Gさん)を山に連れていきたかったのですが、
それがようやく実現しました。
「40年ぶりに山にきました、こんなに木が大きくなって・・」
亡くなったご主人との思い出もいろいろあるようで、
ときどき立ち止まっては感慨にふけっているようでした。

「ここでよくスイカを冷やしたんですよ。」
小さな沢を渡るために土や丸太でせきとめ、
小さな池をつくったのですが、
自然な感じに仕上げたのでよかったのかもしれません。





画面左に、今回作った池が見えます。
3人が立っているところは道がなく、もともと沢でした。


こちらは息子さん。
ホオノキの苗木をとっていかれました。
おばあちゃん(Gさん)がホオノキを好きだと
いうことで、間伐のとき気をつけて残しました。

Gさんののカラマツ林はもともとジャガイモ畑で、
昭和初期から30年くらい、でんぷん工場も経営していたそうです。
畑から出た大量の石を積み上げたものも残っていました。
それを道づくりで壊さないように、配慮しました。

ちょっと、住宅リフォームのビフォーアフター番組みたいですが、
思い出のものを残すのも大事だなと思いました。
しかし、今回はまれなケースかもしれません。

息子さんは、以前テレビで見たという、広葉樹をたくさん残す
カナダの森づくりと、今回の間伐の方針が同じだったことに
驚いておられ、また道づくりも「これは他の道とは違う」と
こちらが驚くほどおばあちゃんに力説されていました。

何かが伝わったかも、と思った瞬間でした。



左は隣接する山の所有者のKさん。
Kさんは建設関係のお仕事ですが、
薪を自分で運び出している方です。
道の仕上がりは喜んでいただいたのですが、
道の出口がGさんの土地を通るので、やっぱり気を使うようです。
木を運ぶときにはどうしても道にあとがつくので、
メンテナンスが必要な場合もあるからです。
簡単な申し合わせをしましょう、となりました。

自分の山だから自由に・・
そうできればいいのですが、沢にはさまれて
アクセスが限られているので、道はみんなのもの、
というルールがどこかで必要になります。

それぞれが道をつけると、きゅうくつで無理な











道づくりになってしまい、山も壊れてしまいます。

下の写真は、Gさんのトドマツ林、6月のようすです。
足元には、次世代のトドマツがびっしり。
自然に種がおちてこうなりました。
その上には、背丈以上に伸びたたくさんの広葉樹。
もちろん自然に生えたものです。
今後も、木を植える必要が全くないくらい、びっしりと生えています。
林業では「天然更新」と呼んでいます。
自然力を最大限に活かして、森を再生しながら木材も得る。
今後この苗木たちは、光の奪い合いの競争をしながら
負けたものはどんどん枯れていきます。
50年後まで生き残るのは100分の一以下。

これを見て、山主さんたちは大変驚いていました。
これらを育てていろんな木が交じり合った豊かな森、
いろんなものが収穫できて、台風や虫の害などにも強い森づくりが
可能になっていきます。
それには、ときどき(毎年~数年に1度)見回りも必要です。
ときどき森の恵みを収穫し、ついでに見回りもできる。







 下は、ある伐採現場。「天然更新」はマニュアルがなく、
扱いに難しさがあります。そこでいきおい、伐採単価が
一番安い「皆伐」、40年程度で森林の時間をリセットし、
また苗木を植える、というやり方があります。
(よく見ると苗木が植わっています)
一時的に山主さんにお金は入りますが、夢も一緒にリセットされてしまう。
もっと木を太く育てれば長期的に収益も見込める(可能性がある)。
ある程度、産業振興も必要なので、仕方ないのですが、
森林のプロなら40~50年ごとにリセットする方法と、
100年、200年と、森を大きく豊かに育てながら
少しずつ伐採する方法を、山主さんに選択肢として
説明できなければならないと思うのです。





50年、100年先に、木材のマーケットがどうなっているか、
予測はできないので太い木を育てる必要があるか
分からないのですが・・・


それでも、太い木がたくさんあり、育った分だけ伐れば、
永久に収入が続くことになります。
もちろん植える必要は、少なくとも今回の現場ではほとんど必要ない。
山菜や木の実、キノコやほだ木、薪や建築材、
いつでも取りに行くこともできます。そんな森づくりもあるのです。

また、そんな森の話もご紹介したいと思います。